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薫風の頃は

「ロイド、あんた大概にして陰気よね」
「うるせぇよ、どうせ俺は冬の風だ。お前みたいに能天気でいられる性分はねぇの」
「いや、色見れば解るからさ。ってか、能天気って何よ? 陽気な西風なんだからね、あたしは!」
 はぁ、とわざとらしく嘆くような溜息をついたキーシェ……キーシェルシアの金髪を、ロイド……セフィースロイドは思いきり拳で叩いた。
 そうして彼女がぎゃんとなけば、ふんと鼻を鳴らしつつ右側だけ伸びた銀髪を掻き上げる。

 春の、湖の辺だ。
 二人の若い影がのどかな陽射しにくつろいでいる様は恋人のようにも見える場合が多いとされているらしいが、しかし全くもって、殺伐といった雰囲気に近いのは何故だろう。
 否……正確には「二人」でなく「三匹」であるところから、根本的に間違っているといえば間違いなくそれなのだが。
「……お前等、少しは黙っていることができないのか?」
 ぼそりと呟くのは、ロイドが肘を置きキーシェが上体を投げ出す毛の塊。
 いや、正確には、くろがねの色の毛並みに深緑の目をした大きな獣だ。
 ――もう、当然のように三匹組だ。
 銀髪に紫の目の青年はセフィースロイド。
 金髪に紅の瞳をした少女はキーシェルシア。
 そして同じように人型を取るならば、青年のアールゼオン。
 体よく仕事をサボる率の最も高い、風の精霊の三匹セットである。

「んもう、ゼオはいっつも堅苦しいんだから。今日は正・式・な! 休みよ、休み」
「だからってお前が喋り出していいって意味じゃないっての。るっせぇ……」
「ロイドの言う通りだ。 それに俺が止めなければ、お前等、いつまでも俺を寝かせないつもりだろう」
 キーシェが漏らした愚痴に、すかさず残り二匹が突っ込む。
 とても息の合ったそのやりとりに、人の目に映る姿をとらない風精が、過ぎ去りざまくすくすと嘲笑を残して行く。
 しかも一匹ではなく、何匹も。
 くすくす。
 くすくす。
 くすくす。
 くすくすくす。
 くすくすくすくす。
 くすくすくすくすくす。
 くすくすくすくすくすくs「だあああああああああるっせえええええ!!!!!!!!!」

 真っ先に吼えて立ち上がったのはロイドだ。この中で一番落ち着きがなく短気なのはキーシェだが、侮辱が一番嫌いな……つまりはプライドが高いのは、ロイドなのである。因みにゼオは穏当で賢明な、苦労を一手に請け負う可愛そうな奴だ。
 ともかくそんなロイドの様子に、キーシェはからからと笑いゼオは深い溜息を吐く。
 つまり制止となるものは皆無なわけで。

 春らしくなくごう、と鳴る冷たい風の一陣を巻き立て、彼は素早く獣の姿に転じた。

 荒れる気流にざわめき立つのは、髪と同じ銀色の毛並み。
 不機嫌そのものに細められた瞳は、鉱石のような濃紫。

 だ、と勇ましく地を蹴る、その爪の主は――

「ぶッ……ちょ、ま、ロイド……ッセフィースロイドぉー!!!」
「……馬鹿かお前は……!」
「…………………………ああああああああああああああああッ!?」

 ……馬鹿か
 残り二匹の爆笑に加えさらに酷くなったほかの精霊の忍び笑いに立ち尽くすセフィースロイドは、どう見たって威厳の欠片も無い猫のようなちまいサイズをしていた――。



馬鹿です、こいつら。



因みにキーシェにナギ(ロイドのこと)が「陰気」と呼ばれたのは、恐らくうだうだと手紙(※過去ログ・カザナギノウタ参照/爆)を読み返していたからでしょう。

……陰気過ぎるぞナギー。
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