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winds chaser diary 6 突発性我侭孤独症候群



 正直な話としては、色々とありすぎて、ひとりでいたかっただけなのだが。

 生来から他人のいる状況というものに慣れていない風神である、思い立ったが吉日とばかりに……数日間家を遠く離れて、風に導かれるがままに、海を臨む丘に足を運んでいた。
 ひょお、と高く啼く海風は、苛烈な陽射しに煌く季節をとうに過ぎれば、いかにも荒涼として、鼻に肌にと刺すようだ。  そのような厳しい環境に生きながらえながら、そろそろ眠りに着くのであろう枯れかけた草むらに、リリシャは膝を抱え込むようにして座っていた。
 山を駆け下りる風、街を華やがせる微風、空を荒らしに荒らす大風――どれもこれも、一応一端の風の神としては、清々しいほどに胸のすくものである。
 だが海風は、別だと思うのだ。まるで魂に馴染んでいるかのように、ひどく安らぐ。
(それも言い訳かも……)
 濃紫の瞳を水平に投げたままで、ぼんやりと考えれば、亀のように肩を竦める。
 ……本当はただ、海が見たかっただけかも知れない。
 遥か流れてあの地に繋がる、紺碧の水渡りを。

 有態に言えば、ひどく懐古的な気分である。
 そう遠くもない昔を思い、……まぁ、感傷的になって、いた。
 そもそもそんな時は、彼といつもと変わりなく言葉を交わすのが一番の薬なのだが、いかんせん今一番欲しいものは適度な孤独だ。
 ――重ねて言うなら、ば……
 何か話したいと強烈に思うのに、いざ彼を目の前にすると、ただ隣にいられるならばいいと思い変えてしまう、どうにもこうにも甘えたがりの自分がいるのだ。

「結局――、……否定は、恐いんですよね」
 そ、と吐いた息は、ひやりと頬を冷やす風に溶け紛れる。
 自分だって歳をとった。一年前よりは、出逢った頃よりは、大人になっている筈だ。 ……むしろそうであることを、願う。
 しかしそれでも、未だ臆病だ。
 否定の言葉は嫌いだし、諌めの言葉には反発せずにいられない。
 自分を、このウェールリリシャを否定されることが、ひどく恐い。 たとえそれが正論であったとしても、である。
 こんな感情はいつまで経っても御しきれない。
 だからリリシャは、突発的に孤独になりたがる。 言葉はもらえない、それでも否定をされない、何も動きはしない状態に。
 されども、無論のことで帰路を厭うことはしないし、こうして寂寞とした海を眺めている間にも、気付けば彼を思っていたりも、する。

 だからこそ救いようがない。

 ひとりでいたいのに逢いたくて、逢いたいけれどひとりでいたい。
 こんなもどかしさが、このところずっと喉の奥で、わだかまっている。あと少しで言葉にもなりそうなのに、必至で飲み込んでいる。

 ぐ、とより強く膝を抱えれば、胸元の雪の結晶と紫水晶が、しゃらりと微かに歌った。
 話したい。解って欲しい。それでも、何かひどく、言い知れぬほどに恐い。

「――帰りましょ、っか……」
 結局は本当に、そうして甘えたいだけ、ということかも知れない。
 白い波を視線で追いながらも諦めたように呟いたのは、一際の風が髪を掻き撫でてからだった。

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